後遺障害逸失利益|主婦でも認められる「収入の減少」

2020/03/03

逸失利益が何なのかわからない

逸失利益を請求できる場合って?

逸失利益の実際の計算方法が知りたい

このページをご覧のあなたは、このようなことでお悩みではありませんか?

後遺障害等級が認定されると同時に、後遺障害逸失利益についても検討する必要があります。
後遺障害慰謝料とは別に認められる逸失利益は、どのような場合に請求できるのでしょうか?
また、その額はどのようにして計算されるのでしょうか?
逸失利益の意味から順に、解説していきます。

逸失利益とは

逸失利益について知る

<逸失利益の定義>
不法行為がなければ被害者が得ていたであろう経済的利益を失ったことによる損害をいいます。

 

逸失利益は、本来ならば被害者が得るはずだった利益を補てんするためのものです。

(例)交通事故による後遺障害により、転職を強いられ減収。
⇒その減収分(事故に遭わなければ得られていたであろう利益)を「失った利益」と考えます。

逸失利益は、損害賠償のひとつです。
また、損害賠償はおおきく
①財産的損害
②精神的損害
にわかれます。

【財産的損害】
交通事故に遭った被害者が、事故により負うことになる金銭面での損害をいいます。
たとえば、治療費や逸失利益が該当します。

【精神的損害】
交通事故により、被害者はけがの痛みに耐えるなどの苦痛を負います。
このことを精神的損害といい、それを補てんするものが慰謝料です。

さらに、財産的損害は、
①積極財産
②消極財産
にわかれます。

【積極財産】
交通事故により、被害者が支払わざるを得なくなった費用の支出をいいます。
具体的には治療費や通院交通費のほか、弁護士費用なども含まれます。

【消極財産】
交通事故により、失われた利益をいいます。
交通事故に遭わなければ得られるはずだった収入などをいい、逸失利益は消極財産にあたります。

後遺障害の逸失利益を受け取るには、大前提として後遺障害等級が認定されていることが必要です。

後遺障害等級認定の申請について詳しくはこちら

【交通事故による後遺障害とは?】
事故によるけがなどが完治せず、残ってしまった傷害をいいます。

 

後遺障害の等級は、1級から14級まで区分されており、等級によって受け取れる金額も変わってきます。

逸失利益の種類

ここで一度、逸失利益の種類についても触れておきましょう。

交通事故における逸失利益には、おおきく以下の2つがあります。

①後遺障害逸失利益
後遺障害逸失利益とは、交通事故による後遺症がなければ得られたはずの利益(収入)をいいます。

②死亡逸失利益
死亡逸失利益とは、交通事故による死亡がなければ、生涯得ていたであろう利益(収入)をいいます。

また広い意味では、休業損害も逸失利益に含まれます。
休業損害は、休業した期間の所得補償と捉えられているからです。

休業損害について詳しくはこちら

後遺障害逸失利益はいくらもらえる?

用語の説明と計算式

後遺障害逸失利益は、事故に遭う前の収入(基礎収入)に後遺障害によって喪失した割合(労働能力喪失率)と労働能力を喪失した期間から中間利息を控除して現在価値に修正するための係数(ライプニッツ係数)をかけて求められます。

◆逸失利益計算式◆
【基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数】

 

ではつぎに、後遺障害逸失利益の計算で用いる用語について確認していきましょう。

項目内容
①基礎収入後遺障害がなければ得られていたであろう利益
②労働能力喪失率後遺障害により、労働能力がどの程度失われたかを数値化したもの。完全労働可能な状態のうち、何パーセントが喪失したかを表す。
③労働能力喪失期間原則67歳-(労働者の症状固定時の年齢)
④ライプニッツ係数(将来分を一括取得する逸失利益全額)-(※中間利息)を控除する際に用いる係数

※中間利息・・・労働能力喪失期間に相当する利息を控除すること。

①基礎収入の確定

基礎収入は、交通事故に遭う前の収入を基礎としています。
被害者の就労形態などによっても変わってきますので、個別に確認していきましょう。

サラリーマンの場合
原則、事故に遭う前年度の給与年額を基準とします。 (賞与も含みます) しかし、その額が”賃金センサス”を下回る場合は、”賃金センサス”で算出された金額が基礎収入となることがあります。

【※賃金センサスとは?】
⇒厚生労働省が実施している、賃金構造基本統計調査のこと

専業主婦の場合
実際に収入を得ているわけではないため、賃金センサスを用いて算定します。 平成30年の女性・学歴計・年齢計の平均賃金額は382万6,300円となっています。

主婦でも共稼ぎの場合はどう計算されますか?

「兼業主婦」の場合ですね?その場合は以下の計算式で求められます。

兼業主婦の場合
主婦でありながら、パートなどで収入を得ている人の場合は、実際の収入が平均賃金より高いかどうかを検討します。 兼業主婦の場合、家事労働分の加算は認めないのが一般的です。 弁護士基準で計算する場合、比較の対象は、専業主婦の場合と同じく”賃金センサス”になります。 ”賃金センサス平成30年第1巻第1表”によれば、女性の平均年収額は3,826,300円になっています。 つまり、この金額が実際の収入を下回っていれば、実際の収入で計算されることになります。

また、自営業の場合は以下になります。

自営業の場合
原則、事故に遭う前年度の申告所得を参考にします。

②労働能力喪失率

労働能力喪失率は、後遺障害の等級によりそれぞれ定められています。

▼後遺障害等級と労働能力喪失率 

等級労働能力喪失率
1100%
2100%
3100%
492%
579%
667%
756%
845%
935%
1027%
1120%
1214%
139%
145%

③就労可能年数

就労可能年数は、原則として67歳から被害者が症状固定された年齢を引いて算出します。
なぜ67歳なのかというと、その年までは労働可能であると一般的に考えられているからです。

ここで算出された年数は、次に説明するライプニッツ係数につながってきます。

④ライプニッツ係数

就労可能年数を算出したら、それに該当するライプニッツ係数を確認します。
ライプニッツ係数は、2020年4月以降改正によって変更されます。
交通事故に遭った時期によって、該当する表を参考してください。

就労可能年数とライプニッツ係数(年率5% 2020年改正前) 

就労可能年数ライプニッツ係数
10.95
54.33
107.72
2012.46
3015.37

就労可能年数とライプニッツ係数(年率3% 2020年4月改正) 

就労可能年数ライプニッツ係数
10.97
54.58
108.53
2014.88
3019.60

後遺障害逸失利益を実際に計算

では、実際に後遺障害逸失利益を計算してみましょう。

【例①】収入なし・30歳専業主婦が、後遺障害14級に認定された場合
(事故日は2020年2月現在とします)

▶計算式 (基礎収入は、賃金センサスの第1巻第1表の産業計、企業規模計、学歴計、女性労働者の全年齢平均の賃金額が適用される)
3,826,300円(平成30年の平均給与額)×5%(14級の労働能力喪失率)×16.711(症状固定時の30歳から67歳までの就労可能年数に対するライプニッツ係数)=3,196,873円
※就労可能年数37年については「赤い本」”就労可能年数とライプニッツ係数表”を参照

【例②】37歳・年収500万円のサラリーマンが、後遺障害10級に認定された場合
(事故日は2020年2月に発生したものとします)

▶原則の計算式
500万(年収)×27%(10級の労働能力喪失率)×15.37(症状固定時の37歳から67歳までの就労可能年数に対するライプニッツ係数)=20,749,500円

 

「赤い本」には、もっと細かい就労可能年数に分かれたライプニッツ係数が記載されていますよ。

逸失利益を適正に受けとりたいなら弁護士へ

以上が、後遺障害逸失利益についてです。
後遺障害逸失利益の計算は、被害者の置かれた立場や状況、就労の形態によって変わってきます。
また、後遺障害逸失利益を請求するためには、後遺障害等級が認定されることが必要です。

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