入通院慰謝料はいくら受け取れる?|計算方法と保険のしくみについて詳しく解説

2020/02/17

慰謝料は賠償金の一部?

入通院慰謝料算出の基準は?

実際にもらえる額はどうやって計算する?

このページをご覧のあなたは、このようなことでお悩みではありませんか?

交通事故で怪我などを負った場合、被害者の方は、入院や通院そのものによる精神的損害を被ることになります。
こういった精神的苦痛による慰謝料を請求する際、適正な金額を受け取るためには専門家のアドバイスが不可欠です。
今回は入通院慰謝料について、初めて事故に遭う方にもわかりやすく説明していきます。

慰謝料の中身と計算方法

慰謝料は示談金の一部

初めて交通事故に遭った方は、相手方と示談を進めていく中でいくつもの疑問にぶつかることと思います。
保険会社とやり取りしていても、専門用語が理解できなかったり、優先順位がつけられなかったりと、事故後の手続き面で大変なシーンがいくつもあります。

事故の相手方とやり取りしていくなか、飛び交うことの多い「示談金」
この「示談金」とは、一体何のことを指しているのでしょうか。

慰謝料、休業損害、と別々に支払われるのかと思っていました。

それらをまとめて「示談金」として一括受取することが多いですね。

 

▼交通事故による、主な示談金の内訳は以下になります。
・治療費
・通院交通費(タクシーは必要な限りで認められる)
・看護料(医師の指示がある場合などに認められる)
・入院雑費(入院した場合)
・診断書作成費等
・休業損害
傷害慰謝料(入通院慰謝料)
・後遺障害慰謝料(後遺障害等級認定された場合)
・逸失利益(将来的に受け取れるはずだった所得の補償)

上記でわかるように、「慰謝料」とは、事故の相手方に請求でき得る「示談金」の一部をいいます。
けっして、慰謝料と示談金が別物ではないことを認識しておきましょう。

入通院慰謝料とは

入通院慰謝料とは、交通事故に遭い、入院や通院をしたことによる精神的損害に対する慰謝料のことをいいます。
交通事故に遭った被害者は、事故による怪我や疾病により、入通院を余儀なくされることになります。 入通院慰謝料は、その苦痛を補てんするものとして請求できます。

交通事故で請求できる慰謝料には3つあり、入通院慰謝料はそのうちの1つになります。

 

▼事故で被害者が加害者に請求できる慰謝料の種類
入通院慰謝料
後遺障害慰謝料
死亡慰謝料

慰謝料算定の3基準

続いて、慰謝料の算定方法について見てきましょう。

精神的苦痛の程度の感じ方は、人によって違うと思います。損害額はどのように計算されるのでしょうか?

個人的な苦痛に対する慰謝料なので、確かに算定が難しいのも当然ですね。 入通院慰謝料の計算方法にはいくつか種類があります。

交通事故の慰謝料を算定する場合には、3つの基準が設けられています。

(慰謝料算定の3基準)

自賠責基準自動車損害賠償保障法によって定められた支払い基準 最低保障のため、補償額は最も低い
任意保険基準任意保険会社が独自で設けている基準 基本的には非公開
弁護士・裁判所基準交通事故裁判における支払基準で計算され、 最も高額になる

交通事故の慰謝料を計算する際の支払い基準は、3つあります。
どの基準が用いられるかは、誰がどこに慰謝料を請求したかにより変わってきます
例えば、事故の加害者が自賠責保険にしか加入していなかった場合は、被害者は自賠責保険へ直接請求することになるでしょう。
その場合、自賠責基準で計算されることになります。
加害者側が任意保険に加入していれば、請求先の任意保険会社の基準で計算されます。
弁護士に依頼した場合、弁護士は最も高額な弁護士・裁判所基準で請求していくことになります。 では3つの基準を順番に説明していきます。

①自賠責保険の基準

▼自賠責保険とは?
自賠責保険とは、全ての自動車に対し、契約を義務付けている強制保険になります。
そのため、加入していない運転者には罰則が科されます。

自賠責保険は、最低限の対人賠償を確保することを目的としています。
事故によって怪我を負った方への基本的な保障であり、被害者の治療費等は、まず加害者の自賠責保険から支払われることになります。
任意保険に請求する場合も、保険金は自賠責保険から先に支払われ、不足した分を任意保険が支払います。
一方、事故の加害者が怪我をした場合は、被害者側の自賠責保険から支払いを受けることができます。
しかし、被害者側に全く過失(事故発生の責任)がなければ、被害者側の自賠責保険から加害者に対して慰謝料などが支払われることはありません。

 

▼自賠責保険の主な保障内容
治療関係費
文書料
休業損害
慰謝料

自賠責基準だと、表の各項目ごとの自賠限度額が先に支払われるのですね。

そうなります。これを超えた部分を任意保険に対して請求する場合は、任意保険の基準で再計算されます。 弁護士に依頼する場合は、それを上回る弁護士基準での請求が可能になります。

※なお、任意保険会社は、自賠責分も一括して支払う”任意一括払い”をするのが一般的です。

【自賠責基準での入通院(傷害)慰謝料の額】
①[入院日数 + (実通院日数 × 2)]× 4,200円
②[入院日数 + 通院期間]× 4,200円 の合計うち、少ないほうの計算式が採用されます。

(補足)
入院日数:実際に入院していた日数 実通院日数:通院期間のあいだ実際に病院に通院した日数 通院期間:通院をはじめた日~通院が終わった日までの期間

これが自賠責保険、つまり最低基準なのですね。

そうなります。 では、任意保険の基準についても触れておきましょう。

②任意保険の基準

任意保険会社の基準は、各保険会社が独自にもつ基準であり、一般的には非公開とされています。
自賠責保険の基準よりは高く、弁護士基準よりは低いといわれています。

また、多くの保険会社は、「旧任意保険基準」を用いているため、おおよその金額目安は確認することができます。 「旧任意保険基準」については、以下をご覧ください。

旧任意保険基準について詳しくはこちら

弁護士に依頼せず保険会社と直接交渉する場合、保険担当者や保険会社により、慰謝料の額が変わるということもあるのでしょうか?

その可能性は充分にあります。 任意保険は自賠責のような強制保険ではないため、金額に幅が出ることもあります。 では最後に、最も高額な弁護士基準について確認していきましょう。

③弁護士・裁判所の基準

弁護士基準で算定される慰謝料とは、俗にいう「赤い本」の基準表によって計算された額をいいます。
「赤い本」とは、日弁連交通事故相談センターが発行している「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」のことをさしています。

「赤い本」を基準に請求できるのは弁護士に限られるのでしょうか?

一般的には弁護士でなければ難しいでしょう。 知識の豊富な弁護士が介入しないかぎり、保険担当者との話合いの土俵に立てないケースも多くあります。

入通院慰謝料を弁護士基準で請求する場合、主に2つの表を参考に計算していくことになります。 以下赤い本に載っている「別表1」と「別表2」になります。

「別表1」

「別表2」

■原則、別表1を用いますが、むちうち症で他覚症状がない場合は、別表2を用いることになります。

■入通院慰謝料算定表は、1か月単位(30日扱い)の基準値が示されており、端数については日割り計算されることになります。

入通院慰謝料の実際の計算例

3つの算定基準をもとに、実際に入通院慰謝料の金額を算出してみましょう。

【参考事例】
後続車に追突された被害事故に遭い、「骨折」と診断されました。その後入院せず、3か月間(実通院日数30日)通院しました。

3つの基準で算出された、入通院慰謝料の額を比較してみましょう。

基準慰謝料の額
自賠責 252,000円
任意378,000円
弁護士・裁判所730,000円

<計算式>

自賠責基準
①[入院日数 + (実通院日数 × 2)]× 4,200円と
②[入院日数 + 通院期間]× 4,200円で基礎日数が少ない方を採用します。

つまり基礎日数は、
①だと(30×2)で60日、②だと通院期間(1か月30日×3)は90日となり、
基礎日数の少ない①の計算式が採用されます。
よって、自賠責基準での入通院慰謝料は、
[入院日数0日+ (実通院日数30日 × 2)]× 4,200円=252,000円と算出されます。

任意保険基準
前述の任意保険基準を採用します。
通院期間3か月の場合は、基準表に照らし合わせると378,000円です。

弁護士基準
前述の表「重症の慰謝料算定表(別表1)」に照らし合わせると、入院0月と通院3月が交わる箇所の金額は730,000円です。

金額についての相談は弁護士へ

被害者の方が、保険会社に直接弁護士基準で対抗することは、きわめて困難といえます。
弁護士基準は、訴訟になった際法律の専門家が用いる算定表です。
そのため、法律の専門家でない被害者の方が、算定表をもとに弁護士基準の適用を求めることは難しいと考えられます。

交通事故の被害に遭われた場合、まずは知識の豊富な弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士であれば、任意保険会社への交渉もスムーズに行うことが可能です。
アトム法律事務所では、人身事故の被害者専用の無料相談を受け付けています。
ご予約は24時間365日、いつでもご連絡をお待ちしています。

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